ものを書く日々

企画から取材、執筆までやるライターわかりお。このブログでは書評中心に書いていきます。

『銀婚式』篠田節子

いい意味で言います。

 

 

銀婚式 (新潮文庫)

銀婚式 (新潮文庫)

 

 

 

このタイトルに惑わされないで。

銀婚式を間近にした倦怠期の夫婦の話、とかではない。

銀婚式を間近にし離婚を決意する妻の話、でもない。

銀婚式を間近にしながら不倫する夫の話でもな(以下略)

 

むしろ終盤までタイトルのことを忘れていました。

篠田節子さんは、読む小説読む小説、もう取材を重ねられて構成を練られた上で書かれているのがよくわかって、ハズレのない凄い作家さん。

 

10冊も読めば読む前から期待が高まります。

そして当然のようにその期待を超えてくる小説ばかりです。

 

この小説は、「あなたの年代ではまだ感情移入できないんじゃない?」と2018年も終わろうとしている時期に久々に会った母が貸してくれたんですが、最後は感情移入しすぎて号泣しそうでした。

 

アメリカ同時多発テロ事件

低迷する日本経済。

リストラ。

うまくいかない転職。

Fランクと呼ばれ見下されている大学。

白い巨塔のような教授たちの派閥。

親子問題。

夫婦問題。

離婚問題。

介護問題。

 

いや、なんというかもう、これが圧倒的なリアリティを持って、全部一つの小説に詰まってるなんて。

 

ぜいたくすぎませんか。

 

思わず文字の大きさ変えちゃったよ。

 

私は日本語教師ですが、大学での話は、ああ!日本語学校でもこういうことあるよ!と思わず声をあげたくなったぐらい、リアルで。

しかも留学生の違法就労についても、少し触れています。

 

そして、篠田節子さんは男性目線の物語を読者に客観視させることにかけても右に出る人がいません。

 

例えばこれ。

 

ゴサインタン―神の座 (文春文庫)

ゴサインタン―神の座 (文春文庫)

 

 

篠田節子、男性目線、とくれば、私はまずこれを思い出すのですが、この小説の主人公と『銀婚式』の主人公は全く異なる性格です。

読み終えた後、この小説を続けて読んで、比べてみるのも楽しいかも知れない。

 

そして、読み終えた後、『銀婚式』というタイトルが心に染み入るという嬉しすぎるおまけもついている。

 

ぜいたくな小説でした。

母よ、貸してくれてありがとう。