ものを書く日々

企画から取材、執筆までやるライターわかりお。このブログでは書評中心に書いていきます。

『嘘ばっか』佐野洋子

昔流行した童話の中の残酷さをあぶり出す小説ではなく、

おとぎ話からヒントを得て、「嘘ばっか」と著者自らパロディであることを肯定し、

ブラックユーモアたっぷりの小説に仕上げられている。

 

作者は『100万回生きたねこ』などで有名な佐野洋子さん。

幼い頃からよく読んでいましたが、佐野さんの大人向けの小説を読むのはこれが初めて。

 

この短編集は裸の絵がたくさん出てくるので、家で一人の時に読むのをおすすめします。

うっかり混雑した歯医者の待合室で開けちゃったよ。

 

嘘ばっか 新釈・世界おとぎ話 (講談社文庫)

嘘ばっか 新釈・世界おとぎ話 (講談社文庫)

 

 

裸の絵、多いんですけど(繰り返し)、その絵が佐野さんならではの独特な画風で。

毒のある文章に絶妙な味付けがされている感じ。

あとがきで、著者自らおとぎ話は「心の傷」だと言っていて、たしかに・・・と思い切りうなずきたくなった。

 

たくさんあるので、順不同でいくつか紹介します。

 

「かちかち山」

怖いのはたぬきでもうさぎでもなくて・・・。この短編集の中でもいちばん毒が効いていた。

 

「眠り姫」

小説としての完成度が高い。原話のイメージとかけ離れた眠り姫。

 

「養老の滝」

だいぶ前に書かれた小説だっていうのを忘れてしまうくらい、現代の社会問題をあぶり出しているように感じた。

 

ヘンゼルとグレーテル

主人公の兄妹の関係性がとても危うく、耽美的。この感じが好きなら、「ラプンツェル」もはまると思います。

 

「舌切りすずめ」

え、え、え、そうなる!?と叫びそうになった。ミステリー小説ですこれは。

 

「ありときりぎりす」

後味のえげつなさでは「かちかち山」と並ぶ。ラストのまとめ方が凄いなぁ・・・

 

「くらげとさる」

純愛小説だと思って読んだら裏切られた。少しグロテスクな場面を想像してしまう。

 

赤ずきん

最後にこれを持ってくるいけずな感じ、大好きです。現代で言うところの毒親が出てくる。

 

全ての短編、印象が強すぎて、このまま全部の感想を書きたいくらいの気持ち。

とんでもなく長文になりそうなのでこのあたりで切り上げます。

 

ところで、私、この短編集の中の「くらげとさる」「養老の滝」「あほうどり」の三編、原話を知らないまま読んでしまったんですが楽しめました。

むしろ気持ちのうえでは、こちらが原話になってしまったかも知れない。