ものを書く日々

企画から取材、執筆までやるライターわかりお。このブログでは書評中心に書いていきます。

『部屋』エマ・ドナヒュー

5歳の誕生日を迎えた男の子。

ママと過ごす、部屋の中での日常。

子供と母親は、どうしてずっと部屋の中にいるんだろうか、という違和感。

すぐに、愛に溢れた二人の日常は恐ろしい事件の最中の出来事であることに気づく。

 

 

部屋 上・インサイド (講談社文庫)

部屋 上・インサイド (講談社文庫)

 
部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)

部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)

 

 

 

上巻はインサイド

下巻はアウトサイド。

その名の通り、部屋の中での二人と、その部屋から脱出した後の二人の姿が描かれている。

 

子供の目線での物語であるため、物語も子供の口調で進んでいくので、最初は読みにくかった。

しかし、上巻の後半、物語は急展開を迎えて、面白さが一気に増した。

 

 

一つの部屋という閉じ込められた空間で、生まれてから五年、ずっと過ごしていた男の子。

不自由さも当然のものとして受け入れていたため、部屋の外の世界は、彼にとって驚きと違和感の連続でしかなかった。

そして母親も、残酷な部屋の中から脱出した後、世間の目にさらされ、家族も変化していて、なかなか安らぎが得られない。

記者たちにインタビューされるシーンは、無神経な取材内容に腹が立つし、辛い。

 

下巻、部屋から出たその後の話があったからこそ、よけいに自分がその場にいるような気持ちになれた。

 

世間の目にさらされることは変わらないし、母親の心の傷もたやすく癒えるものではなく、そこに安易なハッピーエンドはない。

だけど、子供はゆっくりと順応していく。

そして母親も、一つの決意をする。

 

やがて二人は、本当の意味で、部屋と決別する。

そこに希望の光が見えたような気がした。