ものを書く日々

企画から取材、執筆までやるライターわかりお。このブログでは書評中心に書いていきます。

『柔らかな頰』桐野夏生

直木賞受賞作。映画化もされている。

 

5歳の女の子が旅行先の北海道で行方不明になる。

捜索しても、見つからない。

女の子は誰かに誘拐されたのか。それとも…

 

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

 
柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

 

 

この小説は推理小説ではない。

問題が解き明かされていくすっきりとした感じを望んでいるのなら、

この小説は向かないかも知れない。

 

主人公は女の子の母親、カスミ。

行方不明事件をきっかけに、登場人物たちの人生が狂わされていく。

 

人間の怖さ。

人生の無常。

 

そういったものがひしひしと迫ってくる中、

上巻後半で、死病に冒された元刑事、内海が登場し、

カスミと共に行方不明になった女の子有香を探す。

 

そして最後の最後で…そうくるのか。

読み終わった後、しばらくぼうっとしてしまった。

何があっても生き続けないといけない、という人生の辛さが浮きぼりになった感じ。

 

桐野夏生さんの小説を読むとき、

あまり登場人物に感情移入できない、ということがよくある。

この小説もそうだった。

「因果は巡る」と刑事が家族に言ったり、

カスミがもうひとりの娘の梨紗を同じ娘でも有香とは愛情に差がある、と感じたり。

でも、だからこそ物語の内容が、先入観なく入ってくるのかも知れない。

 

「大きくなったら、お母さんにもああいう素敵な服をいっぱい買ってあげよう」

有香の言葉が印象に残る。