ものを書く日々

企画から取材、執筆までやるライターわかりお。このブログでは書評中心に書いていきます。

『地球星人』村田沙耶香

親から子への虐待、

教師から児童への性的虐待

殺人、

そして最後は・・・。

 

衝撃作といってもいいと思う。

でも衝撃的なのは、小説の内容とか、起きる事件の悲惨さだけじゃない。

 

 

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コンビニ人間

『しろいろの街の、その街の体温の』

『殺人出産』

 

これまでも、村田沙耶香さんの小説には、他とは一線を画した独特の感性を持つ女の子たちが出てきた。

 

彼女たちは、「常識的」とされる人たちと対峙し、異質なものとして見られながらも、

自分独自の感性で、切り抜けてきた。

 

この『地球星人』の主人公も、そんな主人公たちと同じタイプに見える。

でも全然違っていた。

彼女が支配されてきた過去は、あまりに過酷で、悲惨なものだった。

 

有名な『コンビニ人間』は村田沙耶香さんの小説の中ではかなり表現が柔らかい。

あとエッセイ集もかなり柔らかい。

 

 

lalecture.hatenablog.com

 

ここにもちょっと書いてますが。

 

だけど本来の村田沙耶香さんの作風は、

性的なものを率直に独自の感性で見据えていて、

ときどきその描写はグロテスクだと思えるくらい過激だ。

 

 

『消滅世界』

『殺人出産』

は、その代表的なもので、頭に光景を思い描くだけで恐ろしくなるくらい。

 

この『地球星人』は、そういった小説たちと同様の作風だと思わせながら、

そこからまた突き抜けた印象。

 

まず、序盤はとてもほんわかしているんです。

ああ、一風変わった村田さんの等身大のような女の子が、

恋をして、きっかけをつかんで、理解者を得る、

『しろいろの街の、その街の体温の』みたいな流れでいくのかな、って。

 

そう思っていたら、直後にその予想は覆りました。

 

家族は主人公に対して無理解で、主人公は疎外感を感じながらも、

家族を憎むことはせず、自分が「ポハピピンポボピア星人」で

地球人のような生き方ができないからだ、と思っている。

 

 

って、ツイッターにも書きましたが。

それで唯一の理解者であるように、

毎年、親の実家の帰省先にいる従兄弟の男の子が登場するんだけど、

この子は理解者というより、主人公の言うがままの人物を演じているような印象も受ける。

 

そして事件が起きる。

イケメンで爽やかな大学生バイトの塾の先生から、性的な行為を要求されるのだ。

 

ここでまず衝撃。

主人公が自分から異星人になったのって、

もしかして周囲の環境のせいじゃないの。

 

それがなかったら、村田作品の主人公には絶対ならないような、

「遺伝子の奴隷」と表現される普通の女性になっていたのかもしれない。

 

そしてひっきりなしに小学生の主人公に不幸が降りかかる。

 

 

そして、物語は時を経て、主人公は30代に。

実家から遠く離れて暮らすことは許されず、

主人公と似たタイプの夫と、肉体関係は結ばずに夫婦としての生活を送る。

 

そして、今も従兄弟の住む田舎の家へ、夫が行きたいと言いだしたところから、

物語は大きく展開する。

 

常識人が何人も登場しては、主人公の生き方を責め立てるのが辛くなるが、

主人公はそれを辛いこととして受け止めると言うより、

異星人として、他の星に住む人を見るような気持ちで接している。

 

ここが時折ユーモアを交えて描かれているのがさすが。

そして結末、と言うより終盤からが衝撃的。

 

 

地球星人

地球星人

 

 

 

色んな要素を交え過ぎているような気もするし

目を覆いたくなるような場面も何度もある。

 

でも読者に媚びず、表現の自由を純文学という形で示している

著者の姿がかいま見えて、なんだか清々しい気持ちにもなった。

 

好みは分かれると思いますが、ぜひ一度、お試しあれ。