ものを書く日々

ライターの若林理央(わかりお)です。書評・イベントレポ・スポット案内のブログ。エッセイ・コラムはnoteで更新中→note.mu/wakario

『真珠』三島由紀夫

ひとつの真珠がなくなったことから、物語が発展する、というと、ミステリーのように聞こえるが、さすが三島文学。

これはまぎれもない純文学小説だった。

 

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ヒロインの佐々木夫人の誕生日会に、友人の4人のマダムが訪れる。

佐々木夫人の真珠がなくなっても、冗談を言えるほどの裕福さがうかがえるマダムたち。

 

しかし誕生日会の後、思わぬところから、なくなった真珠の存在がクローズアップされる。

 

5人の心理描写がすごい。

女性だけの社会で発生しがちな、それぞれの気遣いと、まわりくどさと、いやらしさ…時代が変わっても昔からまったく変わっていないんだなというのがわかる。

男性である三島由紀夫が緻密にそれを描いているのに圧倒される。

 

誕生日会のあと、それまでの人間関係が明かされ、真珠ひとつで、その関係性は変化してしまう。

 

序盤と終盤が見事につながって、序盤でなんでもないことのように感じられた伏線も、終盤で見事に回収される。

 

完成度が高すぎて、三島の代表作の1つになってほしい、と思えるくらいの短編だった。

 

 

三島由紀夫 (ちくま日本文学 10)

三島由紀夫 (ちくま日本文学 10)

 

 

この本に掲載されていた短編は他のも素晴らしいものばかりだったので、また紹介します。