文は人なり

フリーライターの若林理央です。ダ・ヴィンチニュースや好書好日で執筆中。小説や映画について語るブログです。エッセイ→note.mu/wakario Twitter→https://twitter.com/momojaponaise

M-1グランプリ2020準決勝 26組の漫才を見てきた

12月2日、M-1グランプリ準々決勝をライブビューイングで見た。

ネタの内容を言うのはもちろん厳禁である。甲乙つけがたかった全26組の漫才の感想と、M-1グランプリについての思いをここに綴りたい。

 

ちなみに私はお笑いが好きだが、お笑いファンというには経歴が浅く知らない芸人さんたちもいまだに多い。

ただお笑いに興味ない人には「めちゃくちゃ詳しいね」と言われる。

そういった3年ほど前からのにわかファンの視点でこのブログ記事を書いている。

意見や見解の相違があっても「ふ、甘いわね」と思いながら見逃してほしい。

 

 

f:id:lalecture:20201203185559j:plain

 

鑑賞前の予想

 

準決勝進出の中で、高確率で決勝に勝ち進むかなと思っていたのは以下の4組。

 

学天即

正統派しゃべくり漫才をするコンビで、準決勝組唯一のラストイヤー。(※M-1グランプリの出場条件はコンビ結成15年以内であることだ)

2005年のM-1グランプリではアマチュアながら準決勝に進出し、吉本に所属。M-1グランプリがなくなってTHE MANZAIが賞レースになった頃、3回も決勝進出を果たした超実力派。M-1グランプリ決勝は未経験なのでなんとしてでも勝ち進んで欲しいと個人的に願ってた。

 

ぺこぱ

前回M-1グランプリ3位。一発屋で終わらせず、準々決勝では最も笑いをとっていたと噂で聞いた。否定しない漫才を続けて新たな境地に達するのか、それとも…間違いなく決勝に進むだろうなと思っていたコンビ。

 

金属バット

ブラックな漫才が魅力。友人が「金属バットが残ってる!」とはしゃいでいたので、準決前にあらためて動画で見てみたら他にはない持ち味で、これまでのM-1グランプリのファイナリストにもいないタイプだった。「これはいけそう」と感じた。

 

見取り図

大阪よしもとらしい、正統派漫才コンビ。前回ラストイヤーの「かまいたち」、今回出場しなかった「和牛」と似た流れで決勝常連になると予想した。ただネタによっては3年連続は厳しいかもしれないと思っていた。

 

あとはニューヨーク、オズワルド、からし蓮根、インディアンス、マヂカルラブリーといった決勝経験組から2組くらい、一般的に無名なダークホースが2組くらい、結成5年以内の若手が1組くるかなと考えていた。

 

実際、鑑賞して驚いた。

準決勝がこんなにレベルの高いものだったとは。

 

準決勝進出26組の感想(ネタバレなし)

 

誰が決勝に進んでもおかしくなかった26組。それぞれの感想を述べたい。

※敬称略、出場順。

M-1のルールによりネタの内容には一切触れない。

 

ラランド

初の準決勝。「若いなあ」「可愛いなあ」という感想が「面白い」より先に来てしまった。ネタの内容も準々決勝のときのほうが勢いがあり、ワイルドカード枠でトップバッターというのは、観客が想像する以上に大変だっただろう。ワイルドカード枠は敗者復活戦には参加できないため、来年以降の出場をまた待ちたい。

タイムキーパー

結成2年目。次の金属バットが面白すぎて少し印象が薄れてしまった感はあるのだけど、芸歴以上にこなれていて滑舌もいい。笑いのポイントもしっかり押さえていた。

金属バット

最初に大爆笑をさらっていったのは金属バットだったと記憶している。正直、このコンビのネタは安定して面白く、ブラックで独自性もある。決勝で爆発させてほしかったのだけど「テレビ番組だから一般的に受け入れられるものに」と審査員が判断したのか惜しくもファイナリストにはなれなかった。ただ敗者復活戦で勝ち、いっきに優勝候補に躍り出る可能性も高い。

 

ウエストランド(⇒決勝進出)

意外性のあるネタはもちろんのこと、コンビの温度差が笑いを誘う。この不思議な温度差はよしもと芸人ではあまり見られないものなので新鮮だった。個人的に準決勝より二回戦のネタのほうが面白いと思ったので、決勝で流れを変える存在になるかもしれない。

 

ニッポンの社長

芸が細かい…のだけど、好みが分かれるかも知れない。動きで魅せる漫才は疲れているときはなかなか脳に入ってこないことがある。しかし今回の準決勝組では珍しいテイストだったので、審査員や審査方法によっては決勝に進む可能性も十分あっただろうな。

 

ランジャタイ

新感覚の漫才で面白かった。若そうだな…と思ってプロフィールを見たら30代半ばで結成年も2007年とM-1ではベテランの部類。今年は残念だったが、来年、再来年とまだチャンスはある。次こそ勝ち進んで欲しい。

 

祇園

私の好みのタイプのネタだった。コント風漫才でずっと爆笑していた。ただ強豪ひしめく準決勝、観客の反応にばらつきがあった。審査員の中でもそうだったんだろう。ただ祇園キングオブコントでも決勝に行けそうな気がする。

 

マヂカルラブリー(⇒決勝進出)

2017年に決勝進出したコンビ。マヂカルラブリーはなんとも形容しがたい、ちょっとでも感想を言うとネタバレになってしまうような雰囲気の漫才コンビなのだけど、独特な雰囲気を保ったまま、2017年より明らかにレベルアップしていた。決勝進出、おめでとう。

 

からし蓮根

からし蓮根は可愛い。しかし「可愛い」以上に「面白い」が来るのが若手では特徴的だ。ネタの内容に触れるので書くのを自粛するが、他の方の感想を読んでいるとある点が減点対象になったのではないかということだった。漫才というよりはコントっぽさが強く出ているコンビの一つで、今年は決勝に進んだコント風漫才コンビも多かったのでそういった意味でも決勝枠から外れたのかもしれない。

 

カベポスター

聡明さが感じられる漫才で見ながら「凄い…」とつぶやいていた。時間をかけて作り上げたネタだとわかる。キュウと少し似ている正統派漫才だ。2014年結成、今回がM-1準決勝初出場とのこと。まだまだこれからのコンビなので、数年後にはとてつもない大物になっているかも。

 

ゆにばーす

決勝に2回進出したことがあり、知名度も高いので審査員の目は厳しかっただろう。はらちゃんのパワーはほんとすごい。川瀬名人はいつものように緊張してたけど、もはやそれも個性になっている。驚いたのが2013年結成だということ。早くから準決勝・決勝にばんばん進んでたのか。凄いなあ…

 

キュウ

今まで知らないコンビだったので、まっさらな状態で見た。彼らも知性を感じる正統派漫才で、しゃべりの内容で攻める。オズワルドが決勝に進出したため、印象が似ているキュウは今年これ以上進むのが難しかったのかもしれない。今後、期待大。

 

アキナ(⇒決勝進出)

吉と出るか凶と出るか、見る人によって印象が変わる漫才だ。今年は審査員の中で吉と出たようで、久しぶりの決勝進出になった。既に売れているので、どうしても「面白くて当然」と思われてしまうから、準決勝以上のネタが出せるかどうかが勝敗の分かれ目になりそう。

 

おいでやすこが(⇒決勝進出)

ネタが終わった時点で決勝進出は確定していただろう。それほどずば抜けて面白かった。準決勝終了後の予想でも早くから「おいでやすこがは決勝にいくだろうなあ」という声を耳にした。勝つとか負けるとか関係なく、決勝で思い切り笑わせてくれそうで今から楽しみ。

 

オズワルド(⇒決勝進出)

去年の決勝で、優勝したミルクボーイの次に漫才することになってしまったオズワルド。今回もずば抜けて面白かったおいでやすこがの次でプレッシャーがあったのではと思ったけど、みじんも感じさせずファイナリストの会見ではそれをネタにしていた。準決勝のネタも思いもしない展開で「オズワルドってこんなに面白かったっけ!?」って失礼ながら思ってしまった。今年、まちがいなく優勝候補に躍り出た。

 

ロングコートダディ

このコンビはキングオブコント2020のときのほうが個性が発揮されていて見ごたえがあった。個人的な感想なのだけど、漫才より本格的なコントのほうが向いているコンビなんじゃないかなあ。

 

インディアンス

会場がどんどんと湧き、中盤から笑いが止まらなくなる。以前の漫才よりレベルアップもしている。ただ準決勝26組の中から選ばれるのが9組だけで、今年は準決勝のレベルが高すぎた。敗因はそれだけだと思う。いつもながら老若男女問わずわかりやすいネタを披露してくれるので、敗者復活戦で上がる可能性も高そうだ。

 

東京ホテイソン(⇒決勝進出)

ネタに「いいね」ボタンを押せるなら連打していただろう。私は知性派漫才が好きなんだろうな。一回でもとちったら致命傷になる橋を見事に渡り切り、「そう来る!?」という驚きも視聴者に与えた。決勝進出、素直に嬉しい。

 

コウテイ

振り返るとそんなに似ていないのだけど、見ている最中はなんとなくトムブラウンを思い出した。特に九条ジョーさんの笑いの持って行き方が巧妙である。口調やタイミングもいい。ただキングオブコントにありそうな雰囲気で漫才と呼べるのかは微妙なところ。決勝に進出したマヂカルラブリーもだけど。

 

学天即

2005年、アマチュア時代に準決勝進出を果たし、吉本に入所した超実力派。ラストイヤー組で唯一準決勝に進み、プレッシャーも凄まじかったはずで緊張が伝わってきた。ネタは凄く面白い。なんで決勝一度も進んでないんだ、って毎年思ってたし、「しゃべくり漫才」の王道を見せてくれる数少ないコンビだから、残念でしかたない。ただ敗者復活戦、学天即らしさを貫けば視聴者にも面白さが届くと信じたい。

 

ダイタク

双子ならではの漫才、双子だからできるネタ。充分面白いのだけど、終盤のコンビたちがはじけていたため、その中では「地味」と思われてしまったのかもしれない。出番順は大事だな。次に見取り図、その次にぺこぱが来てしまったのも不運だった。

 

見取り図(⇒決勝進出)

ネタの雰囲気が変わった気がする。見取り図は面白くて当然、という雰囲気の中、予想以上の笑いを生んでいた。ファイナリスト発表後の会見のとき、司会の川島さんに「優勝候補」と言われていたけど、三年連続の決勝で和牛のときのように審査員の目も厳しくなっているだろう。第二の和牛、かまいたち、スーマラになりそうだけど、その分毎年ハードルが上がって苦しむことになるだろうし、そういった意味でできれば今年優勝を決めてほしい。

 

ぺこぱ

「えっ!なんでぺこぱファイナリストにならんかったん!?」と今回いちばん驚いた。去年と同じようなネタなら、一発屋と呼ばれただろうし準決勝まで残れなかったはず。厳しい状態でぺこぱが個性を保ったまま、時事性のある斬新な漫才でそれを乗り切ったのは、下積み時代が生きたとしか言いようがなかった。発表までおいでやすこが、ぺこぱの2組は必ず進むとほぼ確信していた。

ファイナリストとして名前が呼ばれなかったのと同時に「敗者復活戦でぺこぱが1位→決勝進出→優勝」という未来も一瞬見えた。ただ、そうなると学天即とか金属バットが決勝に行けない…

 

滝音

王道の漫才コンビがラストイヤーを迎えM-1を引退する中、その思いを継ぐ正統派漫才ができるコンビだろう。会場も沸いていた。ただダイタクと同様に、前後のコンビが強烈すぎて印象が薄れてしまったのも事実だった。くじけずこの芸風を貫いてほしい。

 

ニューヨーク(⇒決勝進出)

ものすごい久しぶりに、炎上を恐れないニューヨーク(褒め言葉)が見れた。今の時代に合わない毒と偏見がたっぷりのニューヨークが個人的にも大好きだし、それこそがニューヨークの真髄なんだと思う。彼らが20年前にいたなら、すぐに大ヒットしてただろうな。決勝、委縮せず今回のようなニューヨークらしいネタでお茶の間を驚かせてほしい。

 

錦鯉(⇒決勝進出)

「わ、若手の大会やんな…!?」と観客につっこむ隙も与えず、飛ばしたのが錦鯉。ボケの長谷川さんは1971年生まれ、49歳とのこと。コントっぽいなあと思いつつ、見入ってしまったのはやっぱり実力があるからだろう。「何歳になっても夢は追える」と視聴者に勇気を与える意味でも、このコンビの決勝進出は大きい。本当におめでとうございます。

 

誰が決勝に進んでもおかしくなかった

 

決勝9組、面白かった。だからといって決勝に進めなかった17組がファイナリストに劣っていたとは思えない。

 

M-1グランプリ初回の2001年、エントリー数は1603組だった。

20年近く経った今回、エントリー数は5081組、過去最多を記録した。

細かい計算は省くが、準決勝26組に残っただけで初回であればファイナリストだったはず、と言っても過言ではないのだ。

 

だからこの26組には自分たちは日本一に近い面白い漫才ができるコンビだと実感していただきたいし、テレビもWebメディアも、どんどんこの26組をアピールして起用して、全国区にしてほしい。

 

あとM-1グランプリにコンビ結成歴15年以内というルールがあるが、16年以上のゴールデンタイム全国放送の賞レースも作ってほしい。

2001年とは時代が違う。

年齢が上がっても芸歴が上がっても、思わぬところにチャンスが転がっている時代なのだから。

 

敗者復活戦は視聴者投票

 

M-1グランプリの敗者復活戦はいつからか「人気投票」と揶揄されるようになってしまった。

当日の昼にファイナリスト9組以外の準決勝組が漫才をし、視聴者投票で1組だけ決勝に進めるからだ。

しかし、自分自身に対しても言いたいのだが、「好きなコンビだから」「推してるから」というだけで投票しても、漫才師は嬉しくないのではないだろうか。

 

12月20日の昼、敗者復活戦として、ワイルドカード枠を除いた16組の芸人たちは人生をかけて漫才をする。

その漫才を見て面白いと思った3組に視聴者は投票できる。

視聴者がみんな、推しとか関係なく面白い漫才をしたコンビに投票をして、そのうえで決勝進出1組が決まったら、私たちが推している漫才コンビも満足して今年のM-1グランプリに決着をつけられるのではないだろうか。

 

敗者復活戦で誰が勝ちあがるかは12月20日の夜、決勝の最中に発表される。

準決勝で落ち着いて漫才をしているように見えたラストイヤー学天即のツッコミ奥田さんは、よく見ると手が震えていた。

漫才を終えてはけるときも反対の方向へ向かいそうになり、ボケのよじょうさんが奥田さんに正しい方向を示していた。

「コンビ仲」なんて言葉で表現できないそんな二人の姿にじんとしたが、同時にM-1グランプリに芸人がいろいろな願いを、夢を託していることを実感した。

コンビを結成して15年、準決勝に何度も進んでいるような実力者ですら緊張してしまう。そのくらい大きな賞レースなのだ。

 

16組の漫才をしっかりと見て、視聴者投票で最も面白いと思ったコンビ3組に票を入れること。

それが私たち視聴者に唯一できることだ。

 

私もいち視聴者として、12月20日、最後まで敗者復活戦と決勝を見守りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司会ははりけ~んずさん。